介護職に年齢制限は無い?定年後に特養で就職できた話
永年、勤めていた会社を3年前に定年退職しまして、介護の仕事に就ました。
正にオールドルーキーが介護職にデビューした訳です。
時間に余裕が生まれ「人と接するのが好き」という自分の性格を活かしたいと思いこの道を選びました。
それまで介護の知識は全くなく、 新しい職種・職場で新鮮さがあると同時に知らない処を歩いているような不安があったのも事実です。
とにかく疲労困憊の毎日
今まで味わった事のないような疲れを感じながら。3年の月日が流れました。
最近ではやりがいを感じながら日々の仕事に精進しています。
最初の1年間はショートスティ(1.2泊 長くて1週間程)の担当でしたが、現在は長期入居者を担当しています。
長期入居者はほとんどの 方が全介護です。つまり服の着脱、食事介護、トイレ風呂介護等を行っています。
介護士に年齢制限は無いと思いながら痛感した大変さ
私の勤務しているのはデイサービス・訪問介護も兼ねている特養老人ホームです。
職員が総勢80数名、利用者は120人程です。先述のように現在、長期入居者の介護にあたっています。
2~3人の介護職員で8名の入居者の身の回りの世話に携わっています。
想像の数倍はハードな仕事
仕事内容は朝の起床介助に始まり、夜の就寝介助までぎっしり時間に追われているというのが現状です。思っていた以上にハードなのは確かです。
当初、入居者の生活に付きそうというのは 根気のいる仕事だと感じました。
例えば、起床時の着衣にしても、服が自分で着れない方に着てもらうのに苦労しました。
慣れればそんなに難しいことは無い
中には服の袖口を掴んでじゃまする(本人はそういう意思はない)方や腕が曲がったままの方など時間がかかってしまいました。
それでもコツを覚えてしまえば、次第に本人にも負荷がかからず、スムーズにできるようになりました。
このように介護の仕事は『習うより慣れよ』の言葉が当てはまる仕事だと痛感しました。
介護士を体験した時の勤務体制
勤務日程は、各1時間の休憩を挟んで早番(6:30~15:30)遅番(12:30~21:30)夜勤(21:30~6:30)に分れています。
各勤務について説明します。
早番 6:30~6:45 引ぎ継ぎ
夜勤担当から前日の様子など注意事項を聞きます。引き継ぎの後、起床時の準備に取りかかります。(蒸しタオルや口腔セットの準備等)
7時 前後 起床声掛け
各部屋に入り、声 掛けをします。(2,3人の方はそのまま入眠してもらいます)
起床時におむつを替えたり(入眠中の方も同様)着衣介助後、トイレに誘導します。
8時前後 朝食準備~食事介護
入眠中の方を除いてあらかた揃ったら、朝食の準備に 取りかかります。朝食は厨房からあがってきた料理をレンジで温めて給します。
個人によって食事前に薬を内服される方もいます。当然、食後の薬もあります。
勤めて感じたのは、毎日の内服薬の多いこと。内服方法も様々で、錠剤を叩いて粉状にして食べ物と共に内服してもらう方や、湯に溶かしゲル化剤で内服してもらう方などいらっしゃいます。
この薬の内服は、その人の体調に関わることですので当然なことですが、落ち着いて個人を間違えないように名前と時間を連呼して行っています。
現在、3人の方が食事介護が必要で、ゆっくり話かけながら行います。
決して無理に詰め込むことはせず、利用者からは「もういい」という言葉は聞けないので再三「まだ食べれますか?」と問いかけます。それと大事なのが姿勢です。
食べる時の姿勢が悪いと食道で詰まったりして誤嚥性肺炎になりかねません。あと咳きこみも気を付けなければなりません。このように食事介護には神経を使います。
10時~11時 風呂介助
お風呂はだいたい午前午後2人ずつ入っていただきます。個人によっては職員1人では湯船に入れられない方もいるので2人で入れる場合があります。
湯船の中で居眠りされる方もいらっしゃるのであがるまでは見守ります。この間、もう1人の職員は他の利用者にお茶かコーヒーの飲み物を給します。
11:30~12:00 昼食準備~食事介護
朝食同様に行います。
13:30~14:30 風呂介護 トイレ介助
お風呂から出たら飲み物を給します。風呂担当でない職員はおむつ、トイレ介助を行います。
15:00~15:30 おやつ供給
厨房からあがってきたおやつを飲み物と一緒に給します。
おやつはそのままでは吞み込めない方がいらっしゃるので、その方には牛乳などで溶いてペースト状にして召し上がっていただきます。
遅番の業務内容
12:30 早番からの引き継ぎ
昼食のかたづけをしながら引き継ぎ事項を聞くことになります。
早番は遅番と交代して休憩を取ります。遅番は早番のあがる前(14:30~15:30)に休憩を取ります。
15:30~17:00 ゴミの回収、洗濯物の整理
利用者が落ち着いている時間に、ゴミの回収、各自の洗濯物の整理を 行います。
この時間帯が一日で一番、ゆとりのある時間です。時々車イスを押して、利用者を廊下に 連れていき、外の景色を眺めていただいたりします。
17:00~18:30 夕食準備、食事介護
夕食準備に 入り、食事介護をします。
18:30~20:30 就寝介護
食事が終わり30分経過したら順次部屋に誘導します。
早い方は7時前に床に就きます。この1時間半が最も忙しい時間となります。
20:30~21:30 共同スペース(居間)の片付け、消毒、明日の準備
就寝介助が終わったら、共同スペースの片付けや明日の準備、洗濯物を干したりします。
夜勤の業務内容
21:30 遅番からの引き継ぎ
夜勤の担当は1人で行います。夜勤の主な任務は巡視です。
定時に各部屋の見守りを行い、寝がえりを打てない利用者の体交を 行ったり、おむつ交換をします。
センサー反応でのトイレ介助も行います。途中、他のユニットと交代で休憩を取ります。以上が1日の仕事の流れです。
介護士を体験して直面した男性では対応できない事
私がこの仕事に就いて一番辛いと感じたのは、1年目のショートスティを担当している時のことでした。
ある女性の利用者を就寝のため部屋に誘導しようとしたのですが、なかなか部屋に入ろうとしません。
それどころか「やめてください」「○○さん許してください」などと場違いな言葉を発します。
それでも何とか部屋のベッドまで連れていって「パジャマに着替えましょう」というと、ブルブルふるえてタンスの前に蹲ってしまったのです。
結局、どうする事もできず…
20分程、押し問答しましたがそれ以上はできませんでした。
結局、他の女性職員を呼んで事無きを得ましたが、「この時ほど、限界を感じたことはありませんでした。」
きっと無理やり男性になにかされた記憶がよみがえったのでしょう。
昼間は自然に会話していて普通の状態だったのに、想定外の行動でした。同時にこの方が気の毒に思えました。
介護の仕事には男性に対応できない事がある
この介護の仕事は家事の延長のような業務が多く、今まで全く経験のない仕事がほとんどです。
それでも何とか「男の自分でもできるんだ!」と言い聞かせてやってきましたが、できないことに直面してショックでしたね。
でも逆に「男だからこそできる仕事もあるはずだ」と自らに言い聞かせています。
また特養なので長期入居者の方の看取りもしますが、ずっとお世話をさせていただいた方を見送るのは大変辛いものがあります。
介護士を体験して良かったと思う事
この職に就いて嬉しく思ったことも度々あります。それがまたやりがいに繋がっています。
利用者さんに1日1回は笑っていただけるように心掛けています。その笑顔が私の心の支えとなりますので。
利用者から『ありがとう』といっていただくことも、ありきたりですがうれしく感じる瞬間です。
1番思い出に残っている言葉は…
私が今までで一番うれしかったのは、ある男性の利用者からの「おやすみ」と言ってもらったことでした。
この利用者は70代半ばですが、10年ほど前に脳梗塞で倒れられ、当施設に来られました。
食欲はありますが、自立できません。車イスで歩行、右手が不自由で昼間も食事意外はほとんど居眠りをされています。
自分だけに向けられた言葉
片言の会話はかわしますが、めったに表情を出しません。それでも男同士、冗談を言ったりきわどい話をするとニコッとされます。
就寝時、ベッドへ誘導しても「おやすみね」の言葉にはいつも反応がなく、横になるとすぐに寝息をたてる。
その日はいつものようにこちらから一方的に話掛け、布団を掛けて「おやすみね」と言うと、しばらく目をあけてられました。
そして「おやすみ」と 言ってくれたのです。何か予想外のことでこちらが少々、面食らった感じでした。
介護を体験した人しか分からない喜び
他の職員にこのことを告げるとびっくりしていました。「○○さんが…?」と。
たぶん「おやすみ」と言ってもらったのは私だけのようです。後々になって、 嬉しさがこみ上げてきました。
たった『おやすみ』という言葉が返ってきただけで喜ぶのも大げさでしょうが、介護の職に就いていると、こんな些細なことでも感激してしまうのです。
でも○○さんが『おやすみ』と言ってくれたのはあの日のたった1度だけでした。もう1度、言ってもらえるように頑張っています。
また、ある利用者に『明日、明後日はお休みでこちらに来ません』というと『残念だね。寂しいよ』とお世辞を言ってもらうのも顔がほころんでしまいます。
他の職員を呼ぶのに『ねえ?』と声を掛けるのに、男で目立つこともあり私を『○○さん』と名前で呼んでいいただくのは嬉しいかぎりです。
介護を体験して思う挑戦してみるべき人
私の場合は転職して全く未知な世界へ飛び込んできました。端から見ると、介護職は俗に言う3K(きつい。汚い、危険)かもしれません。
特に前2つは避けて通れないのも事実です。でもこの職に就いてわかったのですが、案外転職者が多いのです。
私の職場では自分の息子と同世代か少し若い人がほとんどです。3/4は女性ですが、最初から介護職に就いている人との割合は半分くらいです。
転職者のほとんどが介護経験者
残りの前職は知りませんが転職で介護職に就いています。ということはやはり何か目標があって、この職に入ってきたということになります。
たしかに現状をみれば経済的にも他の職種に就いた方がベターかもしれません。でもそれなりの目的があってこの職を選んでいるのです。
それは多少の違いはあっても「利用者の方の世話をしたい」「利用者の方に喜んでもらいたい」といった要素だと思います。
少しでも興味があるなら飛び込んでみるべき
従って、そういう考えを抱いている方には「飛び込んできてください」と言いたいですね。介護職は私のようにほんの些細なことでも心を動かされることが多々あります。
認知症の方と接していると、日常の会話の中でふと笑みを浮かべられる時があります。無垢な幼児同様、認知症の方の笑みは心の正直な表れです。
前述の「おやすみ」を言っていただいた利用者は、普段めったに表情を 出しません。ある就寝時、もちろん2人きりの時ですが、不謹慎ながらわざとおならをしました。
「失礼」と冗談ぽく言うと「 誰でもおならはするからな」と、ケラケラ声を出して笑われました。失礼ではありましたが、心を通わせた瞬間でもありました。
このように利用者の笑顔に接すると、自然とこちらも清々しい気持ちになります。それはまた、この職に就いて良かったことのひとつだと思います。それによって自分も成長できると確信しています。
介護士を体験して思う向いてる人と向いてない人
自分が考えるのにこの介護職に向き、不向きは関係ないと思っています。
現に全く無知な私が3年間、何とか務められているのですから。日々、学んでいくことが大事なのです。
それでも敢えて言うならば、ある程度の忍耐力が必要かと思います。認知症の方の特徴として、同じことを何度も繰り返し言われます。
しかも5分おきくらいに続きます。1日中ではなく、夕方の時間帯が多いのですが、当然「さっき言ったよ」とは言えません。我慢のしどころではあります。
着脱の介助も最初は大変
また、全更衣介助の方の着衣、着脱も丁寧に辛抱強く行う必要があります。
でも日々の繰り返しで慣れていきます。自分自身も向上していくのがわかりました。
最初のうちは不安や疲れが支配しますが、知らぬ間に喜びの方が勝っていきます。
極端な人間嫌いな方でなければ、ある程度の忍耐力があれば務まるでしょう。
介護の体験は自分の人生に活かせる
介護職に就いて3年が経ちました。最初のうちは慣れないことばかりで無我夢中。
なので「とにかくわからないことは聞く」これに専念しました。
私が幸運だったのはスタートが認知症の軽いショートステイの担当だったことです。
利用者と話す機会が多く、接せる時間が多くとれたことは有意義でした。
色んな状態の高齢者がいる
一口に認知症といっても軽い方から重度の方まで様々で、症状も色んな方がいらっしゃいます。
特に長寿で元気な方は手先の作業(包帯巻など)やぬり絵、簡単な計算、パズル等をやられています。私とオセロを楽しむ方もいらっしゃいました。
あるおばあさんは、目を輝かして娘時代のご主人とのなめそめを、何度も聞かせてくれます。
そうした利用者と接した体験は、私の人生においても得るものが多いと 感じました。
かく言う私も老人のひとりです。これからの人生でこの経験を活かしていけたらと思っています。
最後まで読んで頂いてありがとうございました。